(ブルームバーグ):トヨタ自動車は2013年の東京モーターショーでタクシー専用のコンセプト車を発表し、これが「日本の街の風景を変える」としていた。20年の東京五輪開催時には、その言葉が現実のものとなりそうだ。
東京ハイヤー・タクシー協会は20年の五輪開催までに既存車両をトヨタの「JPN TAXI」に優先的に切り替えていく。これまでも環境対応のためハイブリッド車(HV)の積極導入を進めてきたが、協会の川鍋一朗会長は東京五輪までにガソリン燃料のHVとは別に「2割か、できれば3割くらいにしたい」と9日のインタビューに語った。東京では現在約4万3000台のタクシーが走っている。
このコンセプト車は室内空間が広いハッチバック型で、開放口の大きい電動スライドドアや、地上と段差の少ない低いフロアを採用している。採用の決め手となったのは液化石油ガス(LPG)を燃料としたHVである点。国内タクシーの多くはLPG車であり、専用の充てん施設が全国に整備されている。協会は当面1万台をめどに導入し、うち半分を車椅子で乗降が可能な福祉車両にする予定。
川鍋氏は約6年ごとの車両買い替え期間を延ばして、JPNTAXI発売の18年から車両更新を進めると語った。環境対応のための税の優遇措置などを中央省庁・東京都に働き掛けている。一方、電気自動車(EV)については「航続距離の問題からタクシー利用としては現実的ではない」と述べた。東京のタクシーは1日平均で約300キロメートルを走行しており、毎日2、3回の充電に各30分以上かけるのは営業に支障をきたすと述べた。
セダン車からワンボックス型の車両への切り替えも同時に進めており、日産自動車の「NV200」なども今後増やしていく予定という。
LPG利用
トヨタの燃料電池車(FCV)やマツダが販売を伸ばすクリーンディーゼル車の採用について、川鍋氏は「20年までは視野に入っていない」と述べた。背景には11年の東日本大震災の経験がある。当時、被災地だけでなく日本全国でガソリンを確保しようという動きがあり、緊急車両すら燃料補給できない状態となった。しかし、タクシーは専用のLPG施設が利用できたことから、被災地の宮城県石巻市と東京を幾度も往復して輸送に貢献できたのだという。
川鍋氏は「災害時のリスク管理としてもLPGを離れる決断は難しい」と述べ、こうした事情が「EVやFCVに踏み切れない大きな理由でもある」と語った。東京ハイヤー・タクシー協会の資料によると、法人タクシー約3万台のうち、HVは4%、EVが13台、クリーンディーゼル車は3台にとどまっている。
トヨタ流に期待
川鍋氏によると、13年のコンセプト車発表後、これまでにトヨタのエンジニアが10回以上も同営業所を訪ねている。行灯(天井灯)やタクシー専用システム、メーターなどすべて取り外して写真を撮り、カスタマーヒアリングを繰り返し、「どれだけやれば気が済むのだろうというくらい徹底解剖」したという。
協会では妊婦が産気づいたときに事前登録された産院に送る「陣痛タクシー」や、子供だけで乗車できる「キッズタクシー」など新たなサービスを始めているが、トヨタのエンジニアはこうしたサービス方法なども聞き取った。こうしたことから、川鍋氏は「新たなビジネスにも対応した車両になる」と期待を寄せている。
都内のタクシー数は08年に比べて約2割減少している。タクシーの輸送人員数は鉄道などの総人員数のうち8%程度となっており、今後、業界として新たなビジネスモデルの創出が課題となっている。協会では高齢化社会に備えて車椅子の取り扱いや乗降時の介助研修、観光タクシードライバーなどの認定を行っており、20年までに介助は乗務員の半分、観光は3000人が資格者となる見込みだ。
Bloombergから
2015年9月24日(木)6時0分
(引用)
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トヨタのコンセプト車を新型タクシーに、東京五輪まで最大3割採用へ
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