東京都の豊洲市場(江東区)の主要建物下に盛り土がされなかった問題で、豊洲市場の建設に関する環境影響評価(環境アセスメント)の評価書が、盛り土を前提に作成されていたことが分かった。都は専門家会議(座長・平田健正=たてまさ=放送大和歌山学習センター所長)の再検証を踏まえて評価書を修正する方針だが、手続きをやり直す場合には1年以上かかる見通しで、豊洲市場の安全性が確認されても移転がさらに先送りされる可能性が出てきた。【森健太郎】
都によると、豊洲市場の評価書案は、市場建設を担当する部局の都中央卸売市場が2010年11月に作成し、都環境局に提出した。高さ4.5メートルの盛り土をすると明記し、有識者らの審議会を経て11年8月に正式な評価書として公表された。
一方、公表2カ月前の同6月には、主要建物の基本設計書に盛り土をしない地下空洞が記載されていた。実態と異なる前提のまま、評価書は公表されたことになる。
評価書は環境への影響を大気汚染や水質汚濁など14項目で予測した。土壌汚染については、地表から深さ2メートルまでの土を取り除いた上で4.5メートルの盛り土をすることなどによって「対策完了後に計画地内の土壌、地下水及び空気からの汚染物質の暴露による環境への影響が生じることはない」と結論づけた。
都によると、評価書には主要建物のフロアの概要を示した平面図が添付されたが、環境局の担当者は、「図面に地下空洞の記載はなく、審査は盛り土がされていることが前提だった。計画を変更したのであれば、本来は事前に変更届を出さなければならない」と話す。評価書の提出を義務付けた都条例では、事実と異なる届け出をしても罰則はないという。
中央卸売市場の担当者は、「専門家会議の検証を受け、対応策が固まった段階で評価書を修正したい」と語る。
これについて小池百合子知事は23日の定例記者会見で「一般論として評価書の変更届が出てから(アセスメント)やり直しの可否を決めるまでに約1カ月(かかり)、アセスの評価をし直さないといけないとなると、さらに1年3カ月ほどかかる」と述べ、市場移転の延期期間が長期化する可能性を示唆した。
◇環境影響評価(環境アセスメント)
高速道路や卸売市場など大規模な開発事業を実施する際、環境に悪影響を及ぼさないかどうか、あらかじめ調べる制度。事前に事業者自らが環境への影響を調査・予測し、自治体や地域住民の意見を聞いて環境保全策をまとめる。東京都では事業者に対策やその効果などを盛り込んだ評価書案の作成を求め、有識者による審議会での審査を経て、確定した評価書を公表する。
2016年09月24日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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豊洲市場:環境アセス、盛り土前提 修正で移転長期化も
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