◇「女性も」のきっかけに
2020年東京五輪のゴルフ会場、霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)に変革の波がきている。伝統的に男性中心の運営で、東京都の小池百合子知事が「21世紀に女性が正会員になれないのは違和感がある」と苦言を呈したためだ。同倶楽部は戸惑いながらも「将来的には女性を正会員にする時代がくる」と受け止めており、五輪をきっかけにした変化に期待する声も出ている。
◇「正会員は男性のみ」に都知事苦言
同倶楽部は1929(昭和4)年に発足したプライベートクラブで国内有数の伝統がある。関東地方の10候補から国際ゴルフ連盟に「五輪を行うレベルに最も適している」とコース設定を評価され、2013年1月に国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルで会場として記載された。
定款の細則により約1270人の正会員は男性だが、週日会員、家族会員を含めた約1800人のうち女性は200人を超える。年間に約60日ある日曜・祝日のうち、正会員に限定しているのは半分程度。戦前から家族会員で女性がプレーしており、1990年代にはクラブハウスに女性用設備を整え、ジュニアや地域住民にも開放してきた。
同倶楽部の今泉博総支配人は小池知事の発言に「他と比べれば、女性に開放的と自負していたので驚いている」と困惑を隠さない。女性が多い家族会員の入会金は400万円だが、正会員は1000万円を超える。女性から正会員になることの希望はこれまでなく、議論されることはなかった。今泉総支配人は「会員は現状に満足している」という。
しかし、IOCは五輪中長期改革「アジェンダ2020」で男女平等の推進を打ち出している。日本ゴルフ協会の山中博史専務理事は「国際連盟には霞ケ関の運営方法を正確に伝えている。問題点はないとの見解だ」と説明するが、英メディアなどが疑問視する内容で報じており、批判が高まることもある。
同倶楽部理事の杉田茂樹広報委員長は「批判の内容が世間の常識だと思う。女性の正会員はずっと先のことと思ってきたが、近づいたかもしれない」との認識を示す。女性の正会員を認めるには、会員の総会で半数の賛同が必要となる。正会員の平均年齢は69歳。「伝統を守ろう」との会員も多いという。杉田理事は「外からの圧力で『どうしよう』ではなく、考えるきっかけにはなるかもしれない。時間はかかる」と見る。【小林悠太、熊田明裕】
◇プライベートクラブ
同好者の集まりが原点のため、個人会員で組織される。競技性よりもプレーのエチケットやマナーを重んじる。かつてゴルフは男性しかプレーしなかったため、伝統的に会員を男性に制限している名門クラブは今でも少なくない。ゴルフの祭典「マスターズ・トーナメント」を開催する米国オーガスタ・ナショナルGCも2012年に初めて女性会員を受け入れた。民営は「パブリッククラブ」と呼ばれる。
2017年01月18日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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ゴルフ会場:五輪が変える紳士の伝統
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