2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が大会経費を約1兆6000億~1兆8000億円程度とする試算をまとめたことが17日、分かった。そのうち最大で約9900億円が組織委以外の東京都、政府、地方自治体の負担となる。組織委は21日の国際オリンピック委員会(IOC)、都、政府の4者協議で提示する方針。五輪会場の見直しが決着して焦点は経費の分担に移ったが、厳しい調整が迫られそうだ。
大会関係者によると、経費の内訳は運営費8200億円、施設整備費6800億円、資材や人件費の高騰などに備えた予備費が1100億~3400億円。運営費は組織委と、組織委以外(都、政府、地方自治体)で半分ずつ負担する。施設整備費は政府や都が負担する恒久施設が3500億円、組織委の負担が原則だった仮設施設が3300億円。試算では仮設整備は2400億円が組織委以外、900億円が組織委が受け持つとしている。
恒久施設の整備を含めると、組織委以外の負担は1兆1100億~1兆3400億円となる。組織委はスポンサー権料やチケット販売など約5000億円の収入を見込むが、運営費の半額4100億円と仮設整備費900億円が充てられる。
大会経費を巡っては、東京都の都政改革本部の調査チームが9月末に公表した中間報告で3兆円を超える可能性を指摘した。IOCが強い懸念を示したため、組織委は11月末の4者協議のトップ級では「2兆円を切る」との見通しを示したが、IOCのジョン・コーツ副会長が「(上限の)2兆円を容認したわけではない」と、さらなる削減を要求していた。【田原和宏、岩壁峻】
◇膨張歯止めへ「たたき台」
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は大会経費の試算について「結論ではなく、議論の出発点、たたき台」と強調する。2000億円もの変動幅が示すように4年後の実像を反映するものではないが、数字を示した限りは具体化する努力が求められ、大会経費の膨張に歯止めを掛ける効果はある。
試算が固まらないのは仮置きした数字が多いためだ。変動する要素は警備、輸送、インフラ整備など多岐に及ぶ。例えば、警備費用なら大会直前の国際情勢にも大きく左右されるうえ、警備上の理由で一定範囲を封鎖した場合、商業施設などがあれば補償も発生する。選手や観客の輸送費用も実際の運営計画が固まってこないと実数ははじき出しにくい。
13年1月にIOCに提出した立候補ファイルでは組織委は仮設施設の整備費や大会運営費を担うことになっていた。経費が高騰したことで、組織委は約5000億円の収入があってもまかなうのは難しく、今年3月には都、政府の3者で費用分担の見直しに合意し協議も始めた。
だが、五輪予算の適正化を公約に掲げた小池百合子知事の就任で協議は棚上げとなった。組織委は費用分担を決めてから、経費の詳細を詰めることを要望してきたが、総額を明らかにすべきだとする小池知事は「これまでの経緯は理解できない。まさにこれから整理することになる」との認識を示し、見解は隔たりがある。費用を分担する政府も地方自治体も身動きがとれない。
立候補ファイルでは組織委が資金不足になれば補填(ほてん)するのは開催都市の都の責任と明記している。現実的な視点に立った議論が求められる。【田原和宏】
2016年12月17日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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五輪経費:組織委試算1.6兆~1.8兆円 焦点は分担に
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