政務活動費(政活費)を巡る不正で議員12人が辞職したことに伴う富山市議補選(改選数13)は6日投開票された。10人が辞職した自民は公認を見送り、推薦・支持した6人中5人が当選。現有の18議席(正副議長含む)と合わせて定数40の過半数を維持した。ただ、毎日新聞が選挙期間中、有権者100人を対象に実施したアンケートによると、2013年市議選で自民候補に入れた有権者の過半数が、自民以外の候補者に投票。投票先を決める際に78人が政活費の不正問題を「考慮した」と答えるなど、自民支持を離れて批判票を投じた人が多くいたこともうかがえる。投票率は26.94%と、過去最低だった13年(53.05%)を大幅に下回った。【大東祐紀、古川宗、石川貴教】
「議員の怠慢が出ている」「市民として恥ずかしい」。毎日新聞が実施した有権者100人アンケートの結果からは、政活費不正に対する憤りが、投票先を左右したことがうかがえる。
不正発覚前には28議席を有した自民は3分の1強が辞職した。アンケートでは、2013年市議選で自民候補に投票したと答えた有権者が100人中45人。そのうち、今回も自民の推薦・支持候補に投票したのは14人で「任せられるのは自民しかない」(74歳無職男性)など、保守王国・富山の底堅い支持層は垣間見えた。ただ「白票にしたかったが、付き合いで入れた」(53歳主婦)など揺れる本音を明かす人もいた。
自民以外の候補に投票先を変えた人は25人と、継続して自民に入れた人を大きく上回った。「不正が許せなかった」(80歳無職男性)「今回はさすがに入れられない」(40歳自営業男性)など、政活費問題を理由に挙げる有権者が目立つ。「名前が出なかった人も、調べたら新たな不正が見つかるのでは」(45歳会社員男性)と「不正のドミノ」への警戒感も根強い。
支持政党別にみても、自民支持層29人のうち自民に投票したのは12人と約4割。「どこに入れても一緒」(59歳パート女性)と白票を選ぶ人もいた。無党派層になると自民離れはさらに進み、56人のうち自民に入れた人は7人にとどまる。
一方、民進系は2市議が辞職。既に結果が出た富山県議補選に続いて候補者ゼロとなった民進の支持者は、多くが投票先を無所属に変更した。
棄権を選んだ有権者からは「選挙をしても変わらない」(45歳会社員男性)「不正は『またか』という感じ」(21歳大学生男性)など、あきらめムードが漂う。新態勢となる市議会が有権者の信頼を取り戻すには、政活費問題を中心とした議会改革に、強い姿勢で取り組む必要がありそうだ。
◇議会改革への期待を受け
補選の日程が決まった9月21日から1カ月余で告示を迎えた短期決戦。立候補した新人25人は政活費不正に対する有権者の厳しい目や、議会改革への期待を受けながら選挙を戦った。
自民推薦で当選した無所属新人の江西照康氏(50)の陣営は、逆風が強いと見て「自民」は前面に出さなかったが、それでも「なぜ『自民から推薦をもらったんだ』と問われることもあった」と話していた。江西氏は万歳をした後、「市民目線の当たり前の感覚を持って市議会を立て直す。役に立てる市議になりたい」と語った。
一方、共産、社民は追い風を受けた。社民新人の東篤氏(56)の陣営は「自民や政治への怒りをよく聞いた。時間がないなか、後半になって有権者の反応も良くなった」と手応えを感じていた。
日本維新の会は9月に県組織「富山維新の会」を設立し、新人3人を擁立。代表の吉田豊史衆院議員(46)は「維新の名前はある程度、広められた」とした。
「政活費は一切使わない」と訴えた無所属新人の中井康博氏(44)は落選。「『不正は駄目』という声はいっぱい聞いたが、投票につながったかどうか分からない」と初の選挙戦に戸惑いも感じていた。
2016年11月07日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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富山市議補選:政活費に厳しい目 自民は過半数維持も…
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