相次ぐ台風の接近や秋雨前線が停滞した影響で、9月は全国的に記録的な日照不足となった。降水量も多く、野菜が発育不良となり農家を直撃。出荷前の大根が腐り、大量に廃棄される深刻な事態に。一方、スーパーでは野菜の価格が高止まりしており、台所にも影響が広がる。
気象庁によると、9月は日本に六つの台風が上陸・接近し、台風の北上に伴い暖かく湿った空気が日本上空に流れ込んで雨雲を発達させた。さらに、日本の南に太平洋高気圧が強く張りだし、前線が本州付近に停滞した。
このため、全国的に高温多雨になり、日照時間は東日本で平年比74%(各地の平均)、西日本で69%。九州北部は平年比64%と1946年の観測開始以来歴代2位の記録的な日照不足になる一方、降水量は平年の2.1倍と歴代2番目の多さだった。
「早生(わせ)の大根の出荷量は例年の1~2割。生活がかかっているのに赤字だ」。長崎県諫早市飯盛町の農家の男性(62)は肩を落とす。高温と長雨のためか、出荷直前の大根がカビで腐り、大量に廃棄せざるをえなくなった。町内では他の畑でも出荷できない大根が放置され、別の農家の男性は「捨てられないほどの量だ」と嘆いた。
大分県竹田市でも特産の白菜に影響が出ている。菅生(すごう)地区で白菜を栽培する農家の男性(59)によると、長雨などから9月に畑で病気が発生し、出荷量が落ち込んだ。今月8日には南西約20キロにある阿蘇山で爆発的噴火があり、灰の付いた白菜の外側の葉を取り外す作業にも追われた。
福岡市中央区のスーパーでは、白菜は4分の1で215円、大根も2分の1で148円など例年の倍の値段がついており、買い物客の女性(80)は「夫婦2人暮らしで焼き魚に合わせる大根を買うつもりだったけれど、高すぎる。やめた」とため息をつく。仕入れ担当者は「ジャガイモやタマネギをバラ売りにしたり、キャベツなども半分や4分の1にしたりして、少しでも買いやすくなるようにしている」と明かした。
10月に入り、日照時間はほぼ平年並みに戻ったが、福岡大同青果(福岡市)は、仕入れの不安定な状況がしばらく続くとみる。九州農政局園芸特産課の藤元吉夫・流通指導官は「この時期九州に入る野菜のうち、白菜は長野産、キャベツは群馬産が主力。いずれも夏場の九州では気温が高く作れないためで、各地の天候不順が影響して高値になっている」と話す。ただ、九州各地で天候回復とともに生育状況の改善が見込まれるといい、「九州産が主力になる11月中旬ごろには、価格が落ち着くだろう」と話した。【今野悠貴、池内敬芳、青木絵美】
2016年10月19日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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日照不足:相次ぐ台風 「困った…」発育不良で野菜が高騰
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