JR立川駅南口の繁華街のにぎわいが途切れるあたりに書道用品店「紙匠 雅(みやび)」(東京都立川市)がある。和紙の品ぞろえの豊富さが自慢の店だが、近年は店主の吉田徳雄さん(69)の主導で、夜の高尾山に登り、山頂で書道を楽しむ「高尾ナイト&暗闇書道」を定期的に実施してきた。吉田さんは「登り切った達成感と、屋外という開放感。個性があるおもしろい字を書けますよ」と、幅広い世代の参加を呼びかけている。
高尾山での暗闇書道は、2014年11月から14回実施した。通常は午後7時に京王線高尾山口駅に集合。登山後、山頂で夜景を眺めながら参加者が筆をとり、共同で一つの作品を作る。肩の力を抜いた自由な書のあり方を「筆遊び・書遊び」と表現し、実践する吉田さんは「みんなで登れば夜でも怖くないし、夜景を背に大勢で筆を走らせるので、かしこまらず楽しく書に親しめる」と、その効用を説く。
「遊び心」のある書道を目標にしてきた吉田さん。山頂書道のきっかけは、7年前の正月に孫たちと富士山を望む明神山(山梨・神奈川県境)で書き初めをしたことだ。山の上で筆をとると、屋内とは全く違う開放感が柔軟な発想につながることに気付いた。「これは面白い」と、客や知人に店のフェイスブックなどで呼びかけ、富士山の見える山々を中心に「山頂書道」を楽しむようになった。
ただ、仕事と登山を両立するのは体力的にも時間的にも厳しくなり、中断したこともあった。知人に「昼がダメなら、夜でも」と声をかけられ、電車で登山口まで行ける高尾山での暗闇書道が始まった。仕事が終わった後に参加できることもあり、途切れることなく続いている。
インターネットで評判が広がり、遠方からの参加者もいる。「野外での書を通し、若い人たちにも書道になじんでもらえれば」と吉田さん。「暗闇書道は私にとって元気の源。できる限り続けていきたい」と力を込める。
次回は9月29日。参加費無料。詳しくは同店(042・548・1388、またはフェイスブック)。【劉彦甫、南迫弘理】
2016年09月04日
毎日新聞(無料)から
(引用)
↧
山頂の開放感:夜の高尾山で暗闇書道 ネットで評判広がる
↧