16日午前3時過ぎ、熊本市内で北へ歩いてすぐの公園に約40人の避難者がいた。ビニールシートが広げてあったが、指定された避難場所ではないらしい。
娘と犬と一緒の60代の女性は「雨が降ったら大変。トイレがある避難所はどこ?」。この日は土曜。週末は100ミリを超す雨の予報だった。サイレンが近づき、消防車が近くのマンションにつけた。
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空き地に数台の車を止めた人たちがいた。一人が持っていたラジオは「市内の橋が落ちた」と伝えている。病院も大変なことになっているようだ。向かいのコンビニエンスストアは、40台は入る駐車場が満杯。避難のため車中泊するのだろう。
ラジオを聴いていた男性に橋の場所を尋ねた。「少し遠いよ。うちの子が自転車店をやっているから、自転車を貸してあげる」。息子の野村賢作さん(39)は本震の時、南の方に青い稲妻のような光を見たという。「店内の整理はもうあきらめたから」と、橋まで案内してくれた。
野村さんと自転車で行くと、長さ数十メートルほどの橋は落ちてはいなかった。通行を規制していた警備員は「情報が飛び交っているみたいだが、橋はひびが入った程度ですね」。
帰り道、熊本学園大付属高校の横のグラウンドは、こうこうと光る夜間照明の下に点々と人が座っていた。時計は午前4時半。自転車を返し、野村さんにお礼を言って別れた。
出直そうと宿へ引き返すと、コンビニ社員の池上龍馬さん(26)がまだ客の対応に追われていた。「飲料品が売り切れそう。午前9時の商品配送車も来るか分からない」。冷静だった顔に不安がよぎった。
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朝、携帯電話に着信があり、急いでホテルから車を走らせ、熊本支局に向かった。途中のガソリンスタンドは長蛇の列で、運転手の一人は「車中泊のために給油するんだ」。
道路はすいていたが、週末だからか地震のせいかは、分からなかった。【田畠広景】
2016年04月30日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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熊本地震:「橋が落ちた?」 派遣記者が見た現場
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