自民党法務部会は2日、女性の再婚禁止期間を6カ月から100日に短縮し、離婚時に妊娠していなかった場合は100日を経過しなくても再婚できるようにする民法改正案を了承した。来週中にも閣議決定される見通しで、法務省は今国会中の成立を目指す。
民法733条は1項で女性の再婚を6カ月禁止し、2項で「離婚前から妊娠していた場合、出産の日から1項を適用しない」と規定している。出産後に女性が再び妊娠しても、前夫の子と推定されることはないためだ。
改正案は1項の再婚禁止期間を100日に短縮したうえで2項を見直し、(1)離婚時に妊娠していなかった(2)離婚後に出産した--場合は1項を適用しないと改める。(1)や(2)に該当することを戸籍の窓口で明らかにするため、原則として医師作成の証明書の提出を求める。
再婚禁止期間内でも高齢で妊娠できないような場合については、法務省はこれまで再婚を認める運用をしてきた。法改正後もそうしたケースでは証明書の提出は求めない方針。
最高裁大法廷が昨年12月、再婚禁止期間のうち100日を超える部分を違憲と判断した。裁判官6人は共同補足意見で「子の父が誰なのか争いが起きないことが明らかな場合には、再婚禁止規定の適用はないというべきだ」と指摘。例として離婚時に妊娠していない場合などを挙げ、他に2人の裁判官も共同補足意見の趣旨に賛同した。【和田武士】
◇解説 嫡出推定含めた幅広い議論必要
法務省は今回の民法改正で、最高裁の違憲判断に沿って再婚禁止期間を短縮するだけではなく、再婚禁止規定が適用されない対象の見直しに踏み込んだ。6人の裁判官が共同補足意見で指摘したうえ、2人の裁判官も趣旨に賛同したことを重く受け止めた結果だ。
一方で、再婚禁止規定が撤廃されたわけではなく、離婚時に妊娠している女性は今後も100日間、再婚が禁止される。最高裁は嫡出推定規定を前提とした再婚禁止規定に一定の合理性を認めているが、「差別的」といった批判は根強い。
例えば、夫のドメスティックバイオレンス(DV)が理由で結婚生活の破綻と離婚時期がずれ、その間に夫とは別の男性の子を妊娠するようなケースもある。離婚後すぐに再婚できず、女性や子どもが一時的に不安定な立場に置かれることになりかねない。
男女平等の観点から、海外では再婚禁止期間は廃止される流れにある。国連の女性差別撤廃委員会も再婚禁止期間の廃止を求めている。民法ができた明治時代と異なり、離婚や再婚が増え、父子関係の判定にDNA型鑑定も利用されるようになった。嫡出推定規定のあり方も含めた幅広い議論を続けていく必要がある。【和田武士】
【ことば】嫡出推定と再婚禁止
嫡出推定と再婚禁止 子の父が誰なのか争いが起きるのを防ぐため、民法772条は妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定し、婚姻成立から200日経過後、もしくは離婚から300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠したと推定すると規定している。この嫡出推定が重ならないようにするため、民法733条1項は「女性は離婚から6カ月経過後でなければ再婚できない」と定め、再婚禁止期間を設けている。
2016年03月2日
毎日新聞(無料)から
(引用)
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犾再婚禁止短縮:民法改正へ 6カ月から100日に
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