犾
(引用)
犾追跡1 領有権問題。比中領有権問題、国際仲裁裁判所の判決が及ぼす影響と比が抱える課題を分析
堅調な成長にやや「陰り」が見え始めたフィリピン経済、空の玄関口のマニラ空港で多発した銃弾所持事件、アジア太平洋経済協力会議(APEC)開催に伴う交通規制の問題など、2015年も多様なニュースが相次いだ。国内外から注目を集めたニュースの「その後」を検証した年末企画「追跡2015」(6回続き)を掲載する。
西フィリピン海を含む南シナ海の領有権問題をめぐり比政府が中国政府を相手取った裁判は12月、比側の口頭弁論が終了した。国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が16年内に判決を出す意向という。13年1月から始まった同裁判は提訴から約3年が経過、ようやく重要な局面を迎えている。
15年、中国による人工島建設は着実に進み、3千メートル級の滑走路建設が発覚。人工島付近の海域に米軍がイージス艦を派遣するなど、同海の緊張は一段と高まってきている。仲裁裁判所の下す判決は、比中両国の領有権問題にどのような影響を及ぼすのだろうか。
▽裁判の争点
比政府は、中国が領有権主張の根拠としている「9段線」の違法・無効性、排他的経済水域(EEZ)内における漁業活動の確保などを求めている。
国連海洋法条約(UNCLOS)13条では「低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水没するもの」を「低潮高地」と定めている。また同条2項で、低潮高地は領海外にある場合は「それ自体の領海を有しない」と規定されている。比側はこれを根拠に、中国が人工島を建設した南沙諸島の7礁のうち5礁(ジョンソン南、スビ、ミスチーフ、ガベン、ヒューズ各礁)が低潮高地に該当するとして、中国の開発の違法性を訴えている。仲裁裁判所が南沙諸島における領海基点の有効性をいかに判断するかが焦点となっている。
▽判決の効果は
仮に比政府に有利な判決が下された場合でも、判決に法的拘束力を持たせるためには国連安全保障理事会の決議を経なければならず、その場合、常任理事国の中国が拒否権を行使するのは明白で、効果を疑問視する声もある。はたして、仲裁裁判所の判決に、中国に対する制止効果を望めるのだろうか。
国際政治に詳しいデラサール大のリチャード・ヘイダリアン准教授は、判決が即効性のある抑止力とはならないが、判決が仮に比政府に有利であれば、「中国の国際的な立場をより難しくさせるだろう」と述べ、外交的な効果があるとの見方を示した。
ヘイダリアン准教授は、親中とみられていたマレーシアも国防相がカーター米国務長官と会談するなど、「対中姿勢に変化の兆しがみられる」と指摘。その上で、比、ベトナムなど中国と領有権問題を抱える当事国だけでなく、多国間で中国に対抗策を講じることがより一層重要になると指摘した。
一方、フィリピンを取り巻く安全保障情勢に詳しい軍事専門家、ホセ・クストディオ氏は「比に有利な判決が出たとしても、比中の領有権問題は解決しない」と断言する。クストディオ氏は比中の領有権問題は二つに分類できると指摘。第一は「航行の自由」にかかわる国際的な問題、第二は比漁師に対する漁業妨害など比が主体的に解決しなければならない問題という。
クストディオ氏は「航行の自由」の問題に関し、「中国の不当性が明確になれば国際的な協力体制で対抗できる。しかし、中国は比との軍事力の差を熟知しており、比領海内での不当行為が収まることはない」と分析。 その上で、米軍のB52爆撃機が今月上旬、南沙諸島で中国が領海と主張する人工島の上空を「誤って飛行」した事実や、1988年に米海軍がペルシャ湾でイラン航空機を撃墜した事件に触れ、「中国が国内のタカ派を抑えきれず暴走すれば、南シナ海でも衝突が起こる可能性はある」と警告した。
▽比の課題
中国の「不当行為」に比が対抗できない原因として、同氏は圧倒的な軍事力の差に加えて「国軍の戦略のなさ」を挙げた。「比は共産党やイスラム武装勢力など国内紛争の解決ばかりに目を向けていたため、国外の敵に対する明確な長期的戦略がない」と比の弱点を指摘した。
一方、ヘイダリアン准教授は「外交交渉とは長い時間が掛かるもの。比は根気よく、粘り強い交渉を続けなければならないだろう」と述べ、南シナ海の領有権問題解決には中長期的な視野に立った外交戦略こそが必要と話した。(鈴木貫太郎)
まにら新聞から
2015.12.26
(引用)
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【靖フィリピン・ニュース】鈊24珵
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